DX事例についてコカ・コーラ・カナダ副社長に取材
コカ・コーラ社は紛れもなく世界で最も象徴的な企業の一つです。今年で創業131周年を迎えるコカ・コーラ社は世界196か国中194か国で販売されており、地球上で最も知られている炭酸飲料となっています。
卓越したマーケティング力と、消費者に素晴らしい体験を提供することに執拗にこだわることで知られるコカ・コーラ・カナダの統合マーケティング・コミュニケーション担当副社長デビッド・アラード氏に、コカ・コーラの組織内でデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)とカルチャーがどのように交差しているかについてお話を伺う機会に恵まれました。この記事を読むと、顧客中心のDXとは何か、そのためにどのような組織変革を起こす必要があるのかを知ることができます。ぜひ最後までご覧ください。
コカ・コーラ社の顧客中心DX
ーーまずはじめにコカ・コーラでのあなたの責任と役割について教えてください。
9ヶ月前にカナダのコカ・コーラに入社したとき、私の最初の役割は、会社のデジタルマーケティング推進を含むマーケティングサービスをリードすることでした。それ以来、マーケティング組織を見直す中で、私の役割は変化してきました。私たちは常に未来を見据えていなければなりません。それが、ボトラーのパートナーやウォルマート、ロブローズ、マクドナルドなどの顧客、そして最終的には消費者へとどうつながっていくのか、構造や能力、そしてそれが何を意味するのかを常に考えています。
そして、その範囲は広範囲にわたっています。
ーーDXは、デジタルの要素を持つあらゆるプロジェクトの決まり文句になりました。コカ・コーラでは、それをどのように定義していますか?
多くの場合、DXは「マーケティングの機会を奪うもの」と解釈されてしまいがちです。消費者に有意義で関連性のある体験を考える時、マーケティングはバスの最初の停留所(顧客との初期接点)であることは間違いありません。そのため、短絡的な思考の持ち主の多くは(悲しいことに、現場よりもむしろ経営ボードメンバーに多い)DXの失敗をマーケティングの責任として考えます。しかし、それは違うと思います。
DXを実行することは、歴史的にサイロ化していたビジネスの側面に目を向け、それを打破するために真の意味で協力的な方法で取り組むことだと定義しています。例えば、IT、キーアカウントチーム、オペレーションなどの間に存在するサイロ化ですね。マーケティングから始めて組織全体に広げることは決して悪いことではないですが、最終的に組織全体がDXに取り組まないと成果は望めません。
ーー 複雑に入り組んだ顧客とリセラーとの関係性の中で、さらにはグローバルにコラボレーションすることは、興味深い話であるに違いありません。そのダイナミックさについて教えていただけますか?
確かにそうですね。話をシンプルにするために2つの面でご説明します。1つは、デジタルがウォルマートなどとの顧客関係にどのように付加価値を与えるかを検討しています。ウォルマートのデジタルチームは、自社のデジタル変革をどのように実行するかを積極的に検討しており、価値を共有する機会は頻繁に得られます。2つ目は、私たちがどのようにして消費者に付加価値を提供するかということです。消費者にとって意味のある体験を実現できなければDXもそれに付随する施策も全て無意味です。
ーーコカコーラは130年前から存在している企業です。コカコーラのカルチャーは元々DXが起こす変化に寛容な文化なのですか。それとも積極的に推進しないといけなかったのでしょうか?
私たちのブランドは130年間存在し、多くの人に愛されてきた訳ですので、変化は私たちのDNAの一部です。しかし、DXにおいて組織の機敏性がより重視されるようになりました。また、世界中のコカ・コーラ社で明らかになってきたのは、私たちが学習する組織になることに重点を置くようになったことです。