Uberから学ぶディスラプションの兆し

Uberから学ぶディスラプションの兆し

編集部から一言:本記事はDr.-Ing. Kai Niklas著が執筆した『Lessons from Uber’s Disruption of the Taxi Industry』をDX Review編集部が本人の協力の元、日本語に翻訳したものである。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を語る際に切っては切れない「ディスラプション」というワード。これを正しく理解するためにタクシー業界を根本からひっくり返した米Uberの事例を知ることは非常に重要だ。本記事では、Uberがタクシー業界で起こしたことを具体的に深ぼりながら、歴史のある大企業がスタートアップや異業種からのディスラプトを防ぐためのヒントを紹介する。

本記事の著者であるDr.-Ing. Kai Niklasが執筆した本や記事にご興味のある方はぜひ彼のホームページを見て欲しい。

これは出張で違う街に行ったときの話だ。遅れて駅に到着した私はタクシーを呼ぶことにした。現金はなかったが、今の時代さすがに問題ないだろうと思った。そして、その期待は見事に裏切られた。カードを受け付けるタクシーがいなかったのである。慌ててATMを探したが、残念ながらそれも見つけられない。これはどこかの田舎や発展途上国での話ではない。ドイツでTop10に入る大きさの、人口60万人もの都市の話だ。

この出来事から数年経って、タクシー業界がUberやUberのようなサービスを提供している企業によって見事にディスラプトされた。Uberを禁止する都市もあるぐらいの脅威だ。

本記事ではタクシー業界が混乱の危機に瀕している兆候をいくつか特定して紹介していく。この事例は具体的なタクシーの例に由来しているが、ほとんどの業界に広く適用できると確信している。

1. 顧客を無視してしまう

「私たちは何十年もトップに立ち続け、誰よりも業界を理解している」大手企業によくある思考である。自分の知見に自惚れてしまった結果、新しい製品やサービスを顧客と会話することなく世に放り出し、出した後の改善はほとんど行わない。もしあるとしても長年積み上がり、検証されていない仮説をベースにだ(信じられない)。

ここでの問題は、企業が「顧客よりも顧客を知っている」と勘違いしてしまうことである。創立当初には顧客と会話したかもしれないが、顧客のニーズは一定ではない。このような「顧客の無視」を経て、昔愛されたあなたのサービスや製品の人気はなくなる。下手すれば競争相手も同じ罠に引っ掛かり、業界全体が顧客を失望させてしまう。これがディスラプションに繋がる芯(隙)の部分だ。

顧客を無視したタクシー業界で起きたこと

「現金以外の支払いは無視してください」「あなたの顧客を無視し続けなさい」と言われ続けた彼らはすぐにどこかでより良いサービスを見つけるでしょう。(皮肉をこめて)Uberのようなサービスについて聞いたことがありますか?

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