連続的変革を遂げたNetflixのDX事例

編集部から一言:本記事はDr. Venkat Venkatraman著が執筆した『Netflix: A Case of Transformation for the Digital Future』を本人の協力を得てDX Review編集部が日本語に翻訳したものである。今でこそ世界最大級の定額制動画配信サービスとなったNetflix (ネットフリックス)だが、その過程で顧客体験を大きくアップデートするDXの成功がある。

知っておいて欲しい。あなたの業界を含むすべての業界が、過去のルールが適用されなくなるデジタルディスラプションの未来に直面するのはほぼ確実だ。これはもう逃れられない。そして「将来のあなたの競争相手は同業界の企業ではなく、全く異なる業界のデジタルに強みを持つ企業」だ。Netflixは顧客の求めているものをデータから客観的に導くことで、ビジネスモデルの変革とDX(デジタルトランスフォーメーション)をやり遂げている。

それでは、Dr. Venkat Venkatraman著『The Digital Matrix: New Rules for Business Transformation Through Technology』でも提案されたフレームワークを用いてNetflixのDX事例を紹介していくとしよう。

Netflix 1.0 : 郵送DVD貸し出しサービス

1997年に創業されたNetflixは、経営学の教材等で教えられる理論を信じるならば今はもう存在していない企業だ。米Blockbuster(ブロックバスター、店舗型DVD貸し出しサービスの大手)の新規サービスのローンチが想定以上の競合となり、2007年にJP Morgan Securitiesによって格下げされNetflixの株価が下落するなど、ビジネスモデルは悲観的に見られていた。

今となっては多くの人に知られているNetflix。元々は有料会員制の郵送DVD貸し出しサービスで延滞料の面倒さ・不満を解消しようと創業された。最初の10年間に、50を超える地域の倉庫で物流チェーンを構築し、DVDを顧客に配布しました。2007年2月には10億枚目の DVDを配布した。その成長は、ロジスティクスと流通における競合他社が簡単には真似できない競争優位となり、顧客の別の需要に目が届かなくなってしまっても仕方がないものだ。しかし、Netflixはそうではなかった。

Netflixが今も存在している理由はデータと分析の力にいち早く気づいたためだ。顧客のリクエストを予想できるようにCinematch (CinemaとMatchの造語。その名の通り、利用者が投入したデータによって、このテクノロジーはどの映画をある利用者が楽しむ、あるいは楽しまないのかを予測することができる) という優越なレコメンドアルゴリズムを開発した。Netflixはデータが流行になる前、既にデータ・ドリブンな企業だったのだ。

2009年までにNetflixは10万の映画と1000万の顧客を獲得。通常であればそのビジネスモデルを続けていてもおかしくない。しかし、Netflixはそれを選択しなかった。Netflixの革新は、ロジスティクスと分析という2つの側面に焦点を当てている。

Blockbusterやその他のビデオレンタルの実店舗は、Netflixのような通信販売のサブスクリプション会社にディスラプトされる可能性を認識していなかった。その証拠に、ブロックバスターは2000年にNetflixを買収する機会があったが、まともな検討すらしなかったそうだ。

Netflix1.0は店舗形式の映画貸し出しをディスラプトした。

革新—混乱— DVD-by-Mail時代の変革サイクル

Netflix 2.0 : ビデオ配信サービスのNetflix

2007年に配信サービスを開始してから、Netflixはビジネスの拡大に成功した。2016年に世界中の9400万の登録者がいて、2017年前半で1億を超えると予測されている (編集部から補足:こちら によると2020年4月に1.8億人の登録者に達した)。Netflixのビデオ配信はアメリカのコールデンタイムに、Youtube, Amazon、Facebookを遥かに超える37%の下りインターネット帯域幅を占める。

今やNetflixは、インターネット上の「ゴールデンタイム・エンターテイメント」の当たり前となった。そして、パソコンやスマートフォン、タブレット、様々なゲーム機、スマートテレビなど、基本的に何のデバイスからでもいつでも利用可能だ。

2016年までのNetflix成功ストーリーの主なメッセージは何か?それは「preserving the core while creating the new」、つまり「コアを維持しながら新しいものを作り出す」ということだ。

従来の成功したビジネスモデル(DVD配送型)を放棄して、ビデオ配信という新しいビジネスモデルを採用し、リーダーになることができた極めて稀な会社だ。過去の成功は将来の成功を保証するものではない。DX(デジタルトランスフォーメーション)における変革のリーダーシップは「コアを維持しながら新しいものを作る」ことであり、Netflixはこれまでのところそれを完全に示している。日本の大企業経営者にとっても学べるところは多いはずである。

クラウド、データと分析

NetflixのDX(デジタルトランスフォーメーション)はテクノロジーとデータと分析という2つのレンズで見ることができる。

続きを読むには

これより先は、会員登録済のお客様のみご利用いただけます。

または