DXは経営者の「アジェンダ」

DXは経営者のアジェンダ

デジタル変革は「CEOアジェンダ」

連載第3回:「DXを阻む組織の「もつれ」

DXを阻む組織の「もつれ」を解けるのは企業のトップ(社長、CEO)だけである。経営トップの使命とは、会社の抱える重要な経営課題(いわゆるアジェンダ)を明確にして、優先順位の高いものから解決していくことである。解決にあたっては、それにふさわしい人物を選び、リーダーシップの発揮を促す。もちろん、経営課題の中には、企業のトップ自身が解決のリーダーシップを発揮しないといけないものもある。それこそ、いわゆる「CEOアジェンダ」である。それは会社の未来を決する最重要経営課題と言ってもいいだろう。会社をデジタル時代に競争優位を発揮すべく変革(DX= Digital Transformation)をリードすることは、まさに「CEOアジェンダ」なのである。

なぜならば、デジタル時代に競争優位を発揮するためには、ビジネスモデル、ビジネスプロセスを新しくするだけではなく、会社の様々な要素を変革しなければいけないからである。新しい人材を採らないといけないし、彼らが大活躍できるように人事制度も変更しないといけない。カルチャーも変えることが必要である。部門間の壁も壊さないといけない。組織構造も改革が必要である。このような多方面に渡る大変革をリードできるのは、CEOしかいない。だからこそ、デジタル変革は「CEOアジェンダ」なのである。

過去にも社会的に大きな関心を集めたIT関係の出来事はあった。ウインドウズ95、インターネット、2000年問題などである。確かにこうしたトピックは社会を賑わしたし、企業も重要問題として取り組んだ。しかし、その先頭に立っていたのは社内のIT担当役員だった。社長がこれらのIT問題で陣頭指揮を取ることはなかったと言っても過言ではない。しかし、デジタル変革はIT担当には任せられない。これに成功しなければ自社に未来はない、という決死の覚悟で社長自身が先取り組まないといけない。

製造小売業から情報製造小売業へ

ユニクロブランドで知られるファーストリテイリングの柳井正会長兼CEOは、デジタル・トランスフォーメーションの推進をまさに自らの「CEOアジェンダ」と定め、その実践をリードしている。目指すのは、ユニクロを「製造小売業」から「情報製造小売業」(Digital Consumer Retail Comapnuy)に大変革することだ。

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プロフィール/一條 和生(いちじょう かずお)

一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻 専攻長・教授

一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。フルブライト奨学生としてミシガン大学経営大学院に留学し、Ph.D.(経営学博士)を取得。一橋大学講師、社会学部専任講師、同助教授、同大学院教授を経て、現職。2003年にはスイスのビジネススクールIMDで日本人初の教授として勤務。現在、株式会社シマノ社外取締役、ぴあ株式会社社外取締役、株式会社ワールド社外取締役、株式会社電通国際情報サービス社外取締役 他