DXの実現を阻む組織のもつれ

DXの実現を阻む組織のもつれ

DXへの第一歩はDigitizationから

連載第2回:「日本企業のDXは「平成、失敗の本質」に学べ

DXは変革である。変革は一朝一夕に成り立つものではない。したがって、まず自社のPurposeに立ち帰り、自社にしかできない未来ビジョンを考え、それをデジタル・テクノロジーを駆使して実現するというプロセスで、なおかつ長期的な展望をもって、変革を進めていかないといけない。

今やDXは流行語化し、DXは日本において日常化しているような錯覚さえ受ける。しかしXは「変革」を意味していることを決して忘れてはならない。そもそも日本企業は変革が得意ではないのである。変革が得意であったならば、「平成失敗の本質」が語られることもないし、世界的な日本企業の地盤沈下が嘆かれることもない。

もちろん、未来ビジョンは簡単に実現するものではないから、「小さな勝利を繰り返す」(Repeat Small Wins)という精神で、デジタル化の活用の領域を広げ、未来への旅路を歩むことが大切である。

最初は既存業務におけるデジタル・テクノロジーの活用からその旅路は始まることだろう。それこそ、いわゆる「Digitization」であり、その成果として業務効率性の向上が実現するだろう。「Digitization」の典型例がRPAである。どちらかと言えばDigitizationは内向きで、自社のパフォーマンス、つまり収益性の向上がアウトプットである。

顧客へのより高い価値の提供を目指してDigitalizationへと進む

しかし、デジタル・テクノロジーは、外向きに、とりわけ顧客のために活用されないといけない。それがデジタル化活用の次のステップである。顧客により高い価値を提供するためにデジタル・テクノロジーを活用するのである。

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プロフィール/一條 和生(いちじょう かずお)

一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻 専攻長・教授

一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。フルブライト奨学生としてミシガン大学経営大学院に留学し、Ph.D.(経営学博士)を取得。一橋大学講師、社会学部専任講師、同助教授、同大学院教授を経て、現職。2003年にはスイスのビジネススクールIMDで日本人初の教授として勤務。現在、株式会社シマノ社外取締役、ぴあ株式会社社外取締役、株式会社ワールド社外取締役、株式会社電通国際情報サービス社外取締役 他