IKEAのDX事例を知るためにCDOに取材
IKEAは世界的な巨大企業です。1943年にスウェーデンで創業したIKEAは、38カ国以上で事業を展開し、全世界で20万人以上の従業員を雇用しています。200億ドルの評価を誇るIKEAのブランドは、多くの事業や業務プロセスにおいて、とても先進的・革新的な思想を持っています。IKEAの家具(あるいは組み立てのためについてくる道具)がない家は世界のどこにもないでしょう。組み立て式の家具というコンセプトから、2030年までにcircular(ゴミの生産をなくす)になるという環境ミッションなど、他社が羨ましがるほどの圧倒的なブランドを得ています。
既に順調な成長を遂げているIKEAのような企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を経営の主要アジェンダに据えた判断に驚く人もいるでしょう。IKEAはDX推進の舵取り役としてIKEAは経験豊富なデジタルリーダーを任命しました。IKEAのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー), Barabara Martin Coppola氏の経歴はグローバルデジタルリーダーとして最適な人物であるようです。
「これほど革新的なグローバル企業でDXをどのように促進しているのか」本人のインタビューを通じて一緒に解き明かしていきましょう。
IKEAがDXで意識している4つの主要分野
ーーまず始めにバーバラさんの経歴とIKEAでの役割について教えていただけますか?
もちろんです。IKEA Retailのチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)のバーバルです。IKEAのデジタル・トランスフォーメーションを促進するために2018年にIKEAに入社しました。これはイケアの歴史の中で群を抜いて最大の変革であり、私たちはすべてを変えようとしています。
えーと、ほとんどすべてです(笑)。
私はSamsung、Texas Instruments、YouTube、Googleなどのテクノロジー業界リーダーと言われている企業で20年の経験があります。また、マドリード工科大学で通信工学の理学修士を、ParisTech(パリテック)でモバイル通信の理学士を、INSEAD(インシアード)で経営学士を取得しています。
ーーすごい経歴ですね。デジタル・トランスフォーメーションの定義は曖昧な場合が多いです。特に小売業界はそのような印象を受けます。IKEAにとってのDXとはなんでしょうか。そして最近それをどう展開していますか。
成功するためにはデジタルをIKEAのあらゆる側面に組み込む必要があります。デジタルは働き方であり、意思決定でもあり、企業を適切に管理する方法でもあります。業界を問わず全てのカスタマー・ジャーニーの8割がオンラインで始まるというファクトもあります。そのため、時代遅れになることなくIKEAらしいユニークな顧客体験を提供するために、3年間のデジタル変革に着手しました。IKEAではこれを4つの主要分野に分けています。
- 顧客との出会い
- 同僚にパワーを与える
- デジタルファンデーション
- デジタルDNA
私たちにとっての変革とは、社会や小売業界で起こっている根本的な変化に対応することです。世界的なコロナの流行が発生し、ビジネスと消費者の行動が大幅に変化して以来、これらの変化のいくつかはさらに重要なアジェンダとなりました。
つまり、IKEAの可能性をデジタルで表現する機会はほぼ無限にあるということです。そのため、「DX」について言及する場合、それは到達点のある目標ではなく、よりスマートで機敏に顧客価値を向上させる旅路として捉えています。消費者のライフスタイルや将来のニーズに合わせて設計されたサービスや製品で、デジタル時代の消費者にとって魅力的なビジネスを実現します。私たちのDXの成果がお客様に伝わる唯一の瞬間は顧客がIKEAを使う時なのです(流行でも、自己満足でもありません)。
内部的には、敏捷性、反復性、結果指向なデジタルを前提とした働き方は、激しく変化する現実と高度な不確実性に対処する方法です。
繰り返しますが、私たち全員が直面している世界の状況は、その不確実性を浮き彫りにしています。IKEAのDXにおいて私たちは「デジタルDNA」を組織に(強引にでも)入れ込もうとしています。これはまず、これまでの考え方をアンラーニングすることから始まります。その上で、新しい働き方を開発し、私たちの行動の結果をしっかりと追跡(検証)することです。そして、私たちはその全てにおいてIKEAのお客様にどんな価値を生むのかということを意識しています。