知識創造を鍵にした日本式オーケストレーションの実践を

知識創造を鍵にした日本式オーケストレーションの実践を

計画過多、分析過多、コンプライアンス過多からの脱却

連載第4回:「DXは経営者の「アジェンダ」

新型コロナが我々に教えることは、どれだけ時間をかけて中期計画を創っても、予想もしない大変化の前にはそれは全く意味をなさなくなってしまうということである。それにもかかわらず、日本企業の多くは過去20年近く、計画過多、分析過多、コンプライアンス過多という状態に陥ってしまった。もちろん、計画、分析、そしてコンプライアンスのどれも皆、大事である。しかし問題は、それらを過度に行いすぎてしまったということである。何か新規事業を検討する場合にも、SWOT分析、PEST分析など外部環境分析にまず取り組み、肝心の事業に関わる者の思いが二の次にされてしまった。優秀な者が行うSWOT分析、PEST分析など外部環境分析は同じような結果をもたらし、企業のユニークさ、独自性の追求が難しくなった。企業は同質的な競争に陥り、体力を消耗していったのである。

未来は予測できない。そうならば、顧客視点に立って自社のパーパス(存在意義)の発揮を目指したビジョンに基づいて未来を創造するしかない。DXもそのための手段であると認識すべきである。平成失敗の本質に学ぶべきことは、短視眼経営をやめて、長期的な展望のもとにイノベーション、すなわち知識創造を通じて自社にしかできない未来を構築することである。そのためには変革が企業変革が不可欠になる。まず取り組むべきは、中期経営計画の改革である。

中期経営計画の立て方を変える

最近、日本では「両利きの経営」への関心が高い。現在の事業の深化と新しい事業の探索の両輪からなる「両利きの経営」によって未来を創造しようという考えは、極めて正しい。問題は、現在の日本企業の多くで依然として広範囲に行われている中期経営計画の立て方で、果たしてそれが実現するのかということである。各部門に3年後の事業計画を立案させ、それを束ねて企業全体の中期計画とするようなやり方では、既存事業の深化は叶うかもしれないが、新しい事業分野の探索は極めて難しい。従来の中期経営計画の立て方の変革なしには、事業のダイナミックな成長は実現し得ないのである。

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プロフィール/一條 和生(いちじょう かずお)

一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻 専攻長・教授

一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。フルブライト奨学生としてミシガン大学経営大学院に留学し、Ph.D.(経営学博士)を取得。一橋大学講師、社会学部専任講師、同助教授、同大学院教授を経て、現職。2003年にはスイスのビジネススクールIMDで日本人初の教授として勤務。現在、株式会社シマノ社外取締役、ぴあ株式会社社外取締役、株式会社ワールド社外取締役、株式会社電通国際情報サービス社外取締役 他