経産省×東証「DX銘柄2021」受付開始。2020との違いや審査の着眼点を徹底取材

DX銘柄2021受付開始

年々注目度が高まるDX銘柄2021の応募受付を開始

前身となる「攻めのIT銘柄」から名前を変え、年々注目度が高まる「デジタルトランスフォーメーション銘柄(以下、DX銘柄)2021」。先日、経済産業省から選定に向けたアンケート調査の開始が発表された。DX銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が共同で東京証券取引所の上場企業全社(一部、二部、マザーズ、JASDAQ)の中からDXに取り組み成果を挙げた企業を選定、公表する制度だ。

※DX銘柄2020の詳細については経産省「DX銘柄2020」直接取材で見えた受賞35社の共通点とは?をご覧ください

企業評価にも直結するとして市場関係者から多くの注目を集めたDX銘柄2020。今年はより一層注目を集めることが予想される。新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大は、私たちの働き方やビジネスの進め方を大きく変えたからだ。多くの企業にとってビジネスモデルを変革し顧客体験をより良い方向にアップデートするためにDXは主要アジェンダとなった。

そこでDX Review編集部はDX銘柄2021について経産省の宮本さんにお話を伺った。DX銘柄2021と2020の違いや審査の着眼点等、これからDX銘柄2021の申込みを検討している企業担当者が気になる情報にも触れているのでぜひ最後までご覧いただきたい。



DX銘柄2021の選定プロセス

――アンケート調査(DX調査)2021の実施概要について教えてください。

東京証券取引所の国内上場会社約3,700社を対象とした調査で、2020年11月25日から回答の受付を開始し、2021年1月13日までが回答受付期間となっています。回答についてはDXポータル(オンライン)で実施していただくこととしております。

――DX銘柄2021の選定プロセスはどのようになっていますか?

全体像としては昨年実施したDX銘柄2020と基本的に同じです。アンケート調査に回答いただいた企業の中から、一次評価としてアンケートの選択式項目及びROEによる評価を実施します。その後、二次評価として記述式項目を中心に最終評価を実施することとなります。ここで評価を実施するのは有識者で構成される銘柄評価委員会となっています。ただし、1点大きな変更点がございます。DX銘柄に応募するためには、DX認定の申請が必要となります。

審査基準のベースとなるデジタルガバナンス・コード

――審査基準についてお伺いできますか?

一つひとつの審査の内容は非公表になりますので着眼点を中心にお話します。

最初にデジタルバナンス・コードについても触れた方が分かりやすいので簡単にご紹介します。経産省では企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をデジタルガバナンス・コードとして取りまとめています。DX銘柄もこのデジタルガバナンス・コードと連動する施策となります。

デジタルガバナンス・コードの全体構造
出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード

デジタルガバナンス・コードの全体像をご覧ください。DX銘柄だけではなくDX認定制度も含んでご説明すると、DX認定制度については(1)基本的事項、特に②の認定基準というものが情報処理促進法の認定基準となります。この認定を超えるプラスαのレベル感を示すものが(2)望ましい方向性、(3)取組例となっていて、これがDX銘柄と連動している形です。

――それぞれの評価のポイントも教えていただけますか。

はい。まず一次評価の選択項目とデジタルバナンス・コードの全体像にある(3)取組例が連動しています。実際にデジタルガバナンス・コード4ページとDX銘柄の一次評価アンケート(DX調査)項目を見比べていただくとそれぞれ連動していることが分かるはずです。

DX銘柄一次評価アンケート項目
図:経産省公表資料を元にDX Review編集部が作成

そのため、一次評価の観点としては、アンケート(DX調査)項目の回答を拝見し、このデジタルガバナンス・コードの(3)取組例をどれだけ満たしているかという点に着目していくこととなります。



DX銘柄2020以上にクリアになった二次評価の着眼点

――続いて、二次評価のポイントも教えてください。

二次評価については選定基準検討ワーキンググループ(Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会に付随するワーキンググループ)の中で「一次評価でも二次評価でも、きちんと成果がでているかということに加え、DXを実現するための能力があるかをしっかり問うていくべき」というご意見や、「二次評価に関して、各企業が数多くの自社の取組の中からどの事例について記載するかを判断する上でも一定の評価軸を示していくことが必要」といった声をいただきました。それを受けて、DX銘柄2021では大きく「企業価値貢献」と「DX実現能力」の2つの観点から評価を行います。

――企業価値貢献についてもう少し詳細をお伺いできますか。

企業価値貢献についての考え方はDX銘柄2021の狙い7ページに記載しています。ここも大枠はDX銘柄2020と変わらず、実際にこの図の縦軸・横軸もほぼ同様です。変わっているのは象限の説明部分です。DX銘柄2020では、「1 革新的な生産性向上」「2 既存ビジネスの変革」「3 新規ビジネス創出」と3つに分けて記載していましたが、DX銘柄2021ではここを「A.既存ビジネスモデルの深化」「B.事業変革・新規ビジネスモデルの創出」として整理しました。

今回のDX銘柄2021では、外部と内部の視点を一体的に見ていこうというようにしています。

二次評価の企業価値貢献についての考え方
出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021の狙い

今回から明示的に書いているのが「AよりもBをより高く評価する」という点です。ここが新しく増えている観点となります。ここはDX銘柄選定基準検討のワーキンググループ(第2回)などの有識者の議論も踏まえて決めているという背景があります。

――確かにDX銘柄2020と比べて観点がクリアになっていますね。

ありがとうございます。もう少し補足するとDX銘柄2021では新たに二次評価の着眼点というシートも用意しています。これはDX銘柄2021の狙い8~9ページに記載しています。

この審査の着眼点があることで審査基準がよりクリアになったということもDX銘柄2020と2021の違いなのかなと思っています。ただ、クリアになったというだけであって審査のベクトルが大きく変わったという話ではありません。

さらに言うとこの着眼点の部分も一次評価の項目と同じようにデジタルガバナンス・コードと文言が一致しています。これはデジタルガバナンス・コードの4ページにある「(2)望ましい方向性」の部分とDX銘柄2021の審査の着眼点を見比べていただくと分かりやすいかと思います。

DX銘柄2021の応募締切は2021年1月13日(水)18時まで

――DX銘柄2021への申込み方法を教えてください

エントリーのためのアンケート調査は、DX推進ポータルで実施しており、回答入力のためのID、パスワードを含む案内は対象企業のIR担当者様宛に郵送しています。回答期間は、2020年11月25日(水)~2021年1月13日(水)18時締め切りとなっておりますのでご注意ください。



DX銘柄2021エントリーにはDX認定制度の申請が必要

――何か注意事項などはありますか?

先述しましたが、DX銘柄2021にエントリーするためには、DX認定制度の申請をアンケート(DX調査)回答期間内に行っていただくことが必要です。

※DX認定制度の申請方法はこちらの記事もあわせてご確認ください

また、DX銘柄2021からはDX推進ポータルでの申請となりますので、gBizIDの取得が必要となります。もしgBizIDの取得を行っていない対象企業の方がいればお早めに申請をお願いできればと思います。

デジタルという言葉はもはや不要。前提であり共通因子

――DX銘柄やデジタルガバナンス・コードに対する思いなどあれば教えてください

DX銘柄もDX認定制度もデジタルガバナンス・コードをベースとしたものです。そういった意味では今後もこのデジタルガバナンス・コードを推進しながら民間企業のDX推進に寄与していきたいというのが我々の基本的な思いとなります。

その上で、このデジタルガバナンス・コードの柱立てを見てください。ここで「デジタル」という言葉は「2-2. IT システム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策」以外に使われていません。これが意味することは、デジタル技術は経営戦略を立てる上でも、企業が成果を出すという意味でももはや当たり前の前提だということです。

デジタルガバナンス・コードの柱立て
出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード

この柱立てにある1~4は企業経営そのものを表しています。そして、この中で何がデジタルなのかというと、要はこれ全部にデジタルが入ってくるということです。言い換えれば、これからの時代の企業経営を考える際、経営の全てにおいて共通因子となる「デジタル」という言葉はあえて書くまでもなく、競争優位を得るためには当たり前のものになったということを意味します。例えば、データやデジタル技術が自社や業界にどのような影響をもたらすのかを考えずに経営ビジョンを考えるのでは、厳しい競争環境における勝者になるのは難しいと考えます。

デジタル技術を使うこと自体を考えるのではなく、データやデジタル技術を前提として「自社の経営をどう考えていくのか」という点が今後より重要になるという考え方をハッキリさせた上でデジタルガバナンス・コード、それに紐づくDX銘柄、DX認定制度は設計されているのです。

最後に、DX銘柄にぜひ1社でも多く応募していただければ嬉しいです。素晴らしいDXの取組みをしている企業を事例として積極的に紹介し続けることで、日本国内や産業全体としてのDXを発展させていきたいです。

日本国内や産業全体としてのDXを発展させていきたいです。

宮本 祐輔
経済産業省 情報技術利用促進課(ITイノベーション課)・課長補佐
民間企業を複数社経験後、経済産業省に入庁。地域経済や地方創生関連の仕事に従事した後、2020年6月より現職。DX銘柄を含む情報処理システムの利用高度化を担当している。