DXに踏み出す企業にお墨付き。経産省「DX認定制度」Web申請受付開始

DX認定制度Web申請受付を開始

経産省「DX認定制度Web申請受付を開始

2020年11月にDX認定制度のWeb申請が開始された。DX-Readyな企業を可視化し、変革に踏み出す企業に国がお墨付きを与えるDX認定制度はデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進する国内全ての企業経営者にとって重要な制度だ。

企業がDX認定を受けるメリットは大きく3つある。

まず、DX認定のための申請プロセスそのものがDX推進時の論点整理に役立つ。これが本制度の本質的な価値だ。次に、DXを進める上で一定の準備ができている企業であると国から認定される事も直接的なメリットの一つだ。認定企業はDX認定事業者として公開されるため、DXに前向きな企業として世間に認知されることになるからである。最後に、DX認定制度が今後デジタルガバナンス・コードに紐づく重要施策のエントリー条件となる点も忘れてはならない。実際に先日受付が開始された「DX銘柄2021」でもこのDX認定制度がエントリー条件(応募要件)となっている。

※DX認定制度の詳細はDX-Readyな企業を全て認定。経産省担当者が語る「DX認定制度」の狙いをご覧ください

このようにDXを推進する企業に多くのメリットがあるDX認定制度だが、正直なところこれまでの紙をベースとした方法には応募ハードルの高さがあった。しかし今回、Web申請受付が開始されると共に申請ガイダンスが公表されたことで申請ハードルは大きく下がったと言える。

そこで今回、DX Review編集部は本制度の担当者である経済産業省・大谷さんに直接話を伺った。本記事の後半では申請方法の詳細も紹介していくのでぜひ最後までお読みいただき、DX認定制度の申請に活かしていただければ幸いである。



業種や規模に関係なくDX-Readyな企業を全て認定

――DX認定制度について簡単に教えてください。

2020年5月15日に施行された「情報処理の促進に関する法律」に基づき、経営とシステムのガバナンス状況の優良な企業を国が認定することで、特に企業経営者の意識変革を促進し、日本全体のDXを促進することを目的とした制度です。

※本制度の詳細については独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のWebサイト参照

――DX認定を受けるために必要なレベル感や認定基準について教えてください

DX認定は企業のDX-Readyな状態、つまり「デジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている」という点にフォーカスしています。DX認定制度はあくまで「経営ビジョンやそれを実現するための戦略を策定し、具体的に進めていくための体制等を明らかにする」ものですので、売上や利益といった結果を問うものではありません。

まずは「準備ができている状態」を目指していただきたいと考えています。

全体像はガイダンス資料13ページを見ていただくのが分かりやすいです。ここでは企業のDX推進状況を「DX-Ready以前」「DX認定事業者」「DX-Emerging企業」「DX-Excellent企業」の4段階に分けていますが本制度で認定される事業者はこの図で言う「DX-Ready」の事業者を指します。

――DXの成果は問わないのですね。どんな企業に申請して欲しいですか?

業種や規模に関わらず幅広い事業者様にぜひ利用していただきたいと考えています。

国の認定を受けるという話をするとよく「申請しても認定されないんじゃないの」とか「申請作業自体が複雑なのでは」というような話も頂きますが、DX認定制度はそうならないような設計をしています。もちろん、何でもかんでも出せば通るという訳ではありませんが。

業種や規模に関わらず幅広い企業様にぜひ利用していただきたいと考えています。

Web申請&ガイダンス資料で申請手続きもスムーズに

――企業が申請を行うにあたって何かサポートがあれば教えてください。

DX認定制度のWeb申請受付開始にあわせて申請時のガイダンス資料を準備しました。

これは、経産省と審査事務を担うIPAだけではなく、外部有識者の意見も踏まえてできる限り事業者の皆様にとって分かりやすいものになるように検討を重ねたものです。申請書の記入にも役立つと思うのでぜひご覧いただければと思います。

また、中には気にされている事業者の方もいらっしゃると思いますが、もし提出した申請書等に不備があったとしても、いきなり不認定の通知が届くことはありませんのでご安心ください。当たり前ですが、我々も1社でも多く認定事業者を増やしたいと思っていますので。そのような時は、DX認定制度の事務局から不足箇所や対応方針等について連絡し、コミュニケーションを取りながら申請まで進めていければと考えています。

――気軽に問合せしても大丈夫なのですね

もちろんです。ガイダンス資料をほとんど見ずに一から全て説明してくださいというのは困りますが、ガイダンス資料をしっかり読んでいただいた上で分からないことや質問がある場合は大歓迎です。

審査を担当しているIPAの担当までメールでご連絡ください。

――申請後のスケジュールや認定されるまでの期間も教えてください

申請いただいた後は、事務局であるIPAで審査を実施した後、経済産業省にて認定を行う形となります。結果については事務局よりメールで通知されます。

申請受付から結果の通知までの標準的な期間は60営業日とさせていただいておりますが、この60日には土日祝日や不備等により申請者が申請内容を変更するための期間は含まれない点だけご留意いただけたらと思います。



DX認定がDX銘柄2021のエントリー条件に

――今回DX銘柄2021と連携した意図や背景等があれば教えてください

この話をするのであれば、先に2020年11月9日に経産省から公表した「デジタルガバナンス・コード」を簡単に紹介させてください。

これは「経営者がデジタル技術の活用を前提として、企業価値向上のため実践すべき事柄」をまとめたものですが、DX認定制度もDX銘柄もこのコードを踏まえたものとなっています。どちらも同じ方向性の施策ではあるのですが、違うのはそのレベル感です。

DX認定制度は先ほどもお伝えしたように「DX-Ready」の状態を認定するものです。

一方でDX銘柄は、DXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れているかに着目して「DX-Excellent企業」及び「DX-Emerging企業」相当の企業をDX銘柄、DX注目企業として選定し、その企業モデルを広く波及させることを目的とした制度となります。

こうしたことから、DX銘柄に選定されるということは、当然DX認定を取得しているべきと考えており、DX銘柄2021に選定されるためにはDX認定の申請が必要ということにさせていただいております。

新たな税制の要件としても活用されるDX認定

――最後に、このDX認定制度をどのように普及させていくか、考えていることがあれば教えてください。

出典:経済産業省「令和3年度(2021年度) 経済産業関係 税制改正について

つい先日(12月21日)、令和3年度税制改正の大綱が閣議決定されたところですが、来年度新設する「DX投資促進税制」を利用する要件の一つに「DX認定の取得」が位置付けられました

詳細な制度設計については今後検討していきますが、様々な仕組みを活用し、広報活動も積極的に行っていくことで、DX認定制度の普及に努めていきます。そしてDX認定制度を通じ、多くの事業者のDX推進・ビジネス成長に貢献できればと考えています。

DX認定制度を通じて多くの企業経営者のDX推進・ビジネス成長に貢献できればと考えています。

大谷 慧
経済産業省 情報技術利用促進課(ITイノベーション課)・課長補佐
新卒で民間企業に入社しIT業界を中心としたHR事業を経験した後、2011年の4月に東京都庁に入庁。2020年4月から経済産業省に異動し、民間企業のDX推進施策に従事している。




簡単!DX認定制度の申請方法

※ここからはDX Review編集部が経産省やIPAの資料を元にまとめた内容です。

DX認定制度にご興味をお持ちの企業経営者やDX担当リーダーの方々がすぐ申請手続きに入れるように、申請方法の概要を記載しました。申請の際にぜひ参考にしてみてください。

【1】DX認定のための申請書類をダウンロード

DX認定制度のホームページから「認定申請書(Wordファイル)」及び「申請チェックシート(Excelファイル)」をダウンロードします。あわせて、記入をスムーズに進めるためにガイダンス資料をお手元に置いておくことをお勧めします。

【2】必要書類に記入

「認定申請書」及び「申請チェックシート」の設問(1)~(6)全てについて回答を記入します。ガイダンス資料には記載内容はもちろん、認定基準や細かな観点も記載されていますので、これを見れば迷わずに記載することができます。

設問1の記入要領
ガイダンス資料:設問(1)の例各設問の認定基準や記入方法の詳細が記載されています

【3】(必要に応じて)補足資料を準備

DX認定制度の申請にあたっては上記に加え、「戦略に関する補足資料」「課題把握に関する証跡資料」など補足資料の提出が可能です。

なお、認定申請書の設問(5)については経済産業省が発表している「DX推進指標」を用いた課題把握を適切に行い、結果を提出した場合を除き、原則として補足資料の追加提出が必須となりますのでご注意ください。

【4】DX推進ポータルで書類を申請

まずDX推進ポータルにアクセスします。
※申請にはgBizIDの取得が必要となりますので、gBizIDの取得がまだの方は先にgBizIDの取得申請を行ってください。

DX水深ポータル
DX認定制度の申請を行う

記載されたSTEP.1~4にしたがって操作を行えば申請は完了です。

DX認定制度の新規申請

記事の冒頭でもお伝えした通り、DX認定制度はDXを推進する企業にとって「DX推進のための論点整理」「DX-Readyな状態の広報」「DX銘柄など施策へのエントリー条件」といったメリットがあります。

日頃から自社や業界のDXに向き合っている企業経営者の皆さまであれば無理なく行える内容ですので、ぜひ申請してみてはいかがでしょうか。